地に足を付けない生活

主成分は旅と本と絵画。

無愛想なフクロウ 【広島県 尾道】

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その館は梟で出来ていた。

梟の絵、梟の時計、梟の置物、梟の本、梟の蝋燭。

梟の中に建物が紛れているようなカフェだった。

100年前の木の香りが心地よい。

建て付けの良くない扉が音を立て、お爺さんが梟の暖簾をくぐる。

無愛想な人だな、横目でチラリと見てそう思った。


梟はトイレにも棲みついていた。

一匹の梟と目が合った。

トイレの右壁に墨で描かれた、真ん丸な梟。

無愛想な梟だな、横目でチラリと見てそう思った。


オーナーは、100年の重みを支えているこの空間を壊すまいと、静かな声で話す。

私は彼に何とは無しに、でも何かを予感してこう聞いた。

「トイレの壁の梟。どなたかに描いていただいたのですか?」


彼は少し驚き、100年の重みを支えているこの空間を壊すまいと、静かな声でこう言った。

「ええ。…。そちらの方が。」

視線の先には、無愛想なお爺さんが居た。

無愛想なお爺さんと、無愛想な梟が、瞳の奥で重なった。


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園山春ニさんとの出会いはトイレの梟から始まった。

彼はパリで生まれ育ち、アンコールワットを日本に広めた第一人者でもある。

イタリアやNYなど世界を駆け回ったのち、現在はここ尾道で25軒の古民家を改築し、梟を描き、福石猫(写真参照)を育てているのだそう。

パリのエッフェル塔にも、NYのエンパイアにも、万里の長城にも、何ならギリシャにまでも、彼の描いた福石猫が潜伏しているらしい!


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梟の魅力に魅せられ、無愛想で暖かいお爺さんと出会い、100年前の木の香りを嗅ぎながら、

ギリシャでやる事がまた1つ増えた

などと独り言ち、自分に似つかわしくないほくほくの蜜柑色の心を持て余したのだった。


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